消えぬ鼓動に名をつけて

公光♀ラハ光♀中心、アウラチャンアンソロジー企画「記憶の欠片」告知サイト。

花笑み

わかば

 その花を見たことに、特に意味はなかった。
 なんとなくそこにあって、なんとなく目に付いたから。緑の中で揺れる、透き通った青に足を止めた。たぶん、一般的に〝美しい〟とか〝可愛らしい〟とか言われる部類のそれは私の膝より下にあったけれど、しゃがむことはしなかった。立ったまま、あの人が来て私に声を掛けるまで、ずっとそれを見ていた。揺れていて飽きなかったし、特に目を離す理由もなかったから。それだけ。

 それが、一週間くらい前の話。

 今日、私の前に現れたあなたは、美しくて透き通った青を抱えていた。

「それ、どうしたの?」
「さっきそこで見つけて、摘んできたんだ」

 私が聞きたかったのは、なぜ摘んで持ってきたのか、ということだったのだけれど、と首を捻っていると、彼もそれを察したらしい。